『弘法、筆を選ばず』は、ホント?


『書の名人である弘法大師は、字を書くのに筆を選り好みなどしない。
ほんとうに技のすぐれた人は、
どんな道具を使っても立派な仕事をするものだ』

…と言う意味のことわざですが、本当に弘法さんは、
筆を選ばなかったのでしょうか?

弘法=弘法大師=御大師様=空海であります

この弘法大師(空海)は、日本における古今を通じての書の大家ですが、
自分で筆の作り方を論文にまとめておられるほど、
筆にはきちんとした考えをお持ちの方だったのです
そんな空海が、筆選びを粗末にするはずがありません


このことわざの真意は、

弘法大師ほどになると、どんな筆でも、それなりの書をものにされた」
という敬仰の意と解すべきでしょう


こんな話があります
弘仁3年の6月、時の天皇・嵯峨亭を尋ねて、
空海は筆4本を差し出しています
その筆は、楷書・行書・草書用の小筆と写経用の筆だったそうです
空海は、嵯峨に「筆は目的に応じて、選ばなければいけません」
と言うようなことを、教えたのでしょうね

「弘法、筆を選ぶ」が正しいようです

 書道の世界では、古来文房具が1つの趣味の世界を形成しているほどで、
筆・墨・硯(すずり)・紙の4つが特に「文房四宝」として尊重されています

 

 ―参考資料『莫山書話』―