書の神様「王義之」の書はどこに…?


王義之は、世に言う『書の神様』です

でも、不思議なことにこれほどまでに、
書道で崇拝されている王義之の直筆が、ひとつも伝わっていないのです

これはどういうことなのでしょうか?


唐に王義之を熱烈に愛する帝王がいました
太宗という、文人帝王でした

この帝王は、今の書道教室のようなものを開き、
書を習わせました
ここまではいいのですが…

この帝王は、自分の死が近づくにつれて
「王義之の書はすべて、俺の墓に埋めよ」
という、命令を下し、王義之の数々の名作を、ことごとく腐らせてしまいました


…というわけで、本物の王義之の書は、一つもなくなってしまいました

でも、コピーは、いっぱい残されています
日本では、にせものは、贋作とか偽作とかいって、いやがりますが
中国では、搨本(とうほん)とか、も本と言って、芸術にしてしまいます

現在の王義之の書のお手本になっているものは、
すべてが、このコピーであります
コピーとは言っても、本当にすばらしいものなのですが、
やっぱり王義之の息づかいまでは、感じられないでしょう

ほんとに、残念なことですね〜


 ―参考資料『莫山書話』―